私たちのミッション
患者中心の医療=患者の意思決定へ
これまでの医療では、医師などの医療者が治療やケアの方法を決定してきました。この方法はパターナリズム(父権主義)と呼ばれ、父親が小さな子の意向を聞かず、よかれと思って決定するのが由来です。しかし、医療の発展で治療やケア、検査などの選択肢が増えたことや、1人ひとりの価値観や生活への影響が重視されるようになり、医療者中心から患者中心に転換することが求められています。
患者中心の医療と呼ばれるもので、それは国際的には、患者の好み・希望や価値観を重視した意思決定を保証し、そのために必要な情報を提供し支援するという意味で使われています。
シェアードディシジョンメイキング(協働的意思決定)という方法
そこで現在、患者中心を実現するための手段となってきているのが、シェアードディシジョンメイキング(協働的意思決定)です。医療者と患者が、意思決定においてエビデンス(根拠となる科学的なデータ)と価値観を共有し、患者が最も良いと思う選択肢について熟慮できるよう支援を受けることです。
意思決定は幸せなことであり支援が欠かせない
シェアードディシジョンメイキングの背景にある考え方は、自分で決められることは人間の生まれ持った性質として幸せなことであり、自由に決められるためには支援が欠かせないということです。自分で自分のことを決めるのは時に難しい作業です。とくに、日本では、小さなころから意思決定の方法について学習する機会が十分に与えられていません。ようやく文部科学省の新しい学習指導要領で、課題を見付け、その解決に向けて思考し判断するという問題解決や意思決定の力に関する項目が新設されたところです。
また、私たちの生活は世間の常識やしがらみ、権力や権威などといった社会との関係に根差しています。そのため自分の価値観が問われます。価値観を英語ではVALUESと言い、価値を意味するVALUEの複数形で表現されます。いくつもの価値がある中で何が最も大事かです。そのような価値観と一致した選択肢を選べる経験こそが、自分らしさ、ありのままの本当の自分であり、それが幸せにつながると考えられます。裏を返せば、自分で意思決定することが自分自身を知ることであり、それは貴重な機会を生かせることだと思います。
よりよい意思決定では選択肢と長所・短所を知ることから
そのためには、よりよい意思決定の方法を知る必要があります。それは、解決すべき問題を明らかにし、問題解決のための選択肢として何があるのかを並べて、それぞれの長所(利益)と短所(リスク)を十分理解して、価値観に合った選択肢を選ぶ方法です。
なぜなら、普段の買い物など何気ない意思決定では、経験や勘などで選ぶことも多いですが、すぐ決められる点ではよいのですが、欠点もあります。例えば、別の選択肢を知らなかったり、選んだ選択肢の短所や、選ばなかった選択肢の長所を見落したりするかもしれません。また、広告など商業目的の情報では、選択肢は限られている上に、長所や短所が誇張されていたり、感情的に誘導するような方法がとられていたりします。それは、医療者に相談する場合でも、可能性がないとは言い切れません。
自分らしく意思決定できるガイド
そこで、選べる選択肢とその長所と短所について中立的に過不足なく提供できるツールが開発されています。その上さらに、自分らしい価値観と一致したものを選べるように工夫されているもので、ディシジョンエイド(decision aid)と呼ばれています。日本語では意思決定ガイドと呼んでいます。このサイトでは、その意思決定ガイドを紹介し、それがより多くの人に利用されることを目的としています。
サイトの企画・運営・編集
大坂和可子(慶應義塾大学看護医療学部)
中山和弘(聖路加国際大学)
サイト作成のための研究助成金
本サイトは、以下の次の日本学術振興会(文部科学省)の研究助成金によって制作しています。
挑戦的萌芽研究「医療の不確実性に翻弄される患者のライフストーリーに沿ったディシジョンエイドの開発」(研究代表者 中山和弘、2015~2019年度)研究課題番号15K15811