1.リテラシーの低いユーザーについてわかったこと
Health literacy online (日本語訳)
はじめに
リテラシー(読み書き能力)が低い成人の認知処理とオンライン上の行動に関する文献が増えています。このセクションでは、リテラシーが、ユーザーの読解能力やさまざまな大きさの画面での情報処理、そしてテクノロジーとの関わり合いにどのように影響し得るかを解説します。
リテラシーは、インターネットの利用におけるほぼすべての面に影響を与える可能性がある。
1.1.読み、そして理解する過程での課題
認識しながら話し、読むということは、文章を解読し理解するという骨の折れる作業です。まず初めに、ユーザーはその言葉に付与された意味によって文章を解読する必要があります。次に、ユーザーは、特定の文章や段落で著者が何を伝えようとしていたのかを知るために言葉をつなぐことによって、その文章を理解する必要があります。
リテラシーの低いユーザーは、リテラシーの高いユーザーに比べて短期作業記憶に問題を抱えていることが多いです。彼らは、難易度の高い言葉を解読することや、それらの意味を覚えることに苦戦しているかもしれません。ウェブサイトが多くの内容を含んでいる場合にユーザーは、その内容のすべてを覚えていないかもしれません。さらに、彼らがよく覚えている内容は、その中の最も大切な情報ではないかもしれません。
リテラシーの低いユーザーはしばしば自身の読解スキルが良い、もしくはとても良いと答えます。しかしながら、目の動きによる情報や有用性研究からは本人の読解力の認識とは異なる結果がわかっています。
これらの研究から、リテラシーの低いユーザーは一般的に読むのが遅く、そしてウェブサイト上の内容を理解するために内容、セクション、言葉を再度読み直すということが分かっています。
そして、状況によって、リテラシーの低いユーザーは、
- 言葉やセクションを読み飛ばす、もしくは段落の途中から読み始める。
- 彼らは効果的にざっと読むことや内容をくみ取ることが難しいため、すべての文字を読もうとする。これは、ユーザーが重要であったり彼らが利害を多く感じるものであったりを読む場合に頻度が高まる。
リテラシーの低いユーザーにおけるこれらの傾向は言葉の多さに圧倒されることのない簡潔な内容を作成する重要であることを強調しています。文字が多い場合はリテラシーの低いユーザーが内容を読み飛ばすことのきっかけになりうる、もしくは彼らは内容を理解しようと苦労し、そのウェブサイトのすべての文字を読もうとするでしょう。
さらに、オンラインの入力フォームはリテラシーの低いユーザーにとって独自の問題となります。ユーザーは、指示と入力フォームの項目を読み、そして質問事項に答えを書くか、もしくは多項選択式の選択肢を読み回答する必要があります。これは、リテラシーの低いユーザーに大きな負担となるのです。
(Figure 1.1~Figure 1.3は省略します)
1.2.操作への理解 (Understanding navigation)
ウェブサイトを操作する時に、リテラシーの低いユーザーがしがちな下記のような傾向があります。
- リンクやアイコンなどのウェブサイトの要素や本文とは関係ない言葉に気を散らす傾向がある。
- 直線的に操作し、頻繁に元に戻る。
- 彼らはそれが正しいかを確かめずに見つけた最初の答えを選ぶ。また、情報が質の高いものか低いものかを見分けることが難しい。
- 間違いを修正するのが難しい。
読む際に、リテラシーの低いユーザーはスクリーンの中央に目を向けます。一旦、彼らは操作メニューからスクリーンの中央に焦点を移すと、彼らはそのサイトの内容が自身の興味にあっていなかった場合に問題の解決や進行の変更のために操作メニュー戻ることはほとんどありません。
1.3.検索の利用 (Using search)
ウェブサイトの検索機能を使用することはリテラシーの低いユーザーにとって困難になりえます。検索に(多少の)正確な文字のつづりをタイプすることが要求されますが、いくつかの検索エンジンでは正確なつづりを手助けしています。最適な選択肢を特定するために読んだり、検索結果を比較したりすることは認知的に困難な作業なのです。
結果として、リテラシーの高いユーザーと比較して、リテラシーの低いユーザーの特徴は
- 情報探索に時間がかかる
- すぐに情報が探せない場合に諦めやすい
- 検索用語を考えるのに困難が伴いがち
- 検索結果の1つもしくは2つしかクリックしない傾向
- 検索方法を変えるのではなく、検索結果を改善するために検索用語を追加しがち
1.4.モバイルの考慮 (Mobile considerations)
リテラシーの低いユーザーは、モバイル機器からインターネットに接続することが多く、そうしたユーザーの90%以上が携帯電話を持っています。また、所得の低いユーザー、教育水準の低いユーザー、マイノリティーのユーザーは、主に携帯電話からインターネットに接続することが多いということも分かっています。
調査によると、リテラシーの低い人は、デスクトップパソコンよりもモバイル機器の使い方を覚える方が簡単だと考えています。
(Figure 1.4は省略します)
2015年3月に我々が、携帯電話に関してhealthfinder.govで試験を行った際、ユーザーには、健康に関する情報についてデスクトップパソコンよりもモバイル機器の方がはるかに検索しやすいことが分かりました。
さらに、読解能力に障害のあるユーザーにとって、携帯の画面の方が読みやすい。このようなユーザー層では、携帯の画面上で読む方が、速さと理解度がどちらも向上する場合があるからです。それは一行の長さが、つまり、モバイル機器ではもともと一行が短いことが、理由である可能性が研究で示されています。
この手引書で示される優良事例はすべて、モバイル機器の使いやすさを向上させるものです。ただし、モバイル機器向けにオンラインの健康情報を設計する際には、考慮すべき特定の留意事項がいくつかあります。
モバイル機器の画面という課題
リテラシーの低いユーザーの非常に多くがモバイル機器から情報にアクセスしていることが分かっているため、モバイル機器の画面上の表示を工夫することを考慮することが非常に重要です。
リテラシーの低い多くのユーザーが、デスクトップパソコンよりもやはり携帯の方が使いやすいという事実にもかかわらず、ユーザーらは、モバイル機器の次のようなナビゲーションの要素に困難を抱えています。
- 階層ナビゲーションに従うこと
- 情報を探す場所を知ること
- メニュー内でスクロールバーを使用すること
- 状況ごとに異なるさまざまな目的に、同じ一つのボタンを使用すること(iPhoneのメニューボタンのように)
- 文字入力に小さなキーボードを使用すること
階層ナビゲーションでは、ユーザーはより広域な情報カテゴリーから始めて、詳細情報を見つけるためにシステムの中を「掘り下げていく」ことになります。このようなナビゲーションは、情報のさまざまな分類の中を掘り下げるという概念をユーザーが理解していることをあてにしています。
一般的に、モバイル用のコンテンツはすべてのユーザーにとって、概要を把握することが二倍難しいと言えます。iPhoneのような小さな画面で読むと、複雑な情報を理解するのがより難しいというのが理由のひとつでです。
さらに、モバイル機器のユーザーはいつもスクロールしています。 一般的に、モバイル用のコンテンツはすべてのユーザーにとって、概要を把握することが二倍難しいと言えます。iPhoneのような小さな画面で読むと、複雑な情報を理解するのがより難しいというのが理由のひとつです。
さらに、モバイル機器のユーザーは、ページ内の情報すべてを一度に見ることができないため、いつもスクロールしています。それは、ユーザーが、デスクトップの画面でぱっと一目で見ることができるのとは違い、コンテンツの他の部分を参照するためにページ内を行ったり来たりしていることを意味します。このことは、ユーザーの理解において悪い影響となり得えています。
- スクロールが常に必要であると
- 時間がかかる
- ユーザーの集中力がそがれる
- ページ内で位置を見定め直すことの問題が起こる。
まとめ
リテラシーの低いユーザーのオンライン上での行動について、インターネットのコンテンツを見るためにどのような機器を利用しているかを含め、理解し予測することは非常に重要です。リテラシーの高いユーザーでさえ、体調不良やストレスがたまっている時、あるいは疲れている時には、インターネットを利用したり閲覧したりすることがより難しくなってしまいます。このような行動を考慮してウェブサイトを設計すれば、私たちすべてにとってインターネットがより良い場所となるでしょう。
ユーザーエクスペリエンスを向上させるには、コンテンツを簡略化することが必然のスタート地点です。
次のセクションでは、人を引き付ける平易な言葉で実用的なウェブサイト用コンテンツを書くための基礎を解説していきます。