3.知りたい情報はインターネットで

インターネット上の保健医療情報の見方

3.知りたい情報はインターネットで

『これからのヘルスリテラシー 健康を決める力』(講談社、2022)
サイト『健康を決める力』をアップグレードしました
Amazon  版元ドットコム

情報チェックの「かちもない」と自分らしく決める「おちたか」の動画を公開しました
YouTube TikTok

質の高い情報をさがすポイント:『かちもない』または『いなかもち』

サイトに書かれた内容の質や信頼性については、どのようなポイントに注意すれば良いでしょうか。サイトに限らず、どんなところの情報でも同じだと思います。

5つにポイントを絞って、次のように覚える方法が考えられています。[1]

か:書いたのは誰か、発信しているのは誰か?→信頼できる専門家または組織か、個人なら所属があやしいかも
ち:違う情報と比べたか?→他の多くの情報とは全く違うかも
も:元ネタ(根拠)は何か?→引用文献がなければ勝手に言っているだけかも
な:何のための情報か?→商業目的でしかないかも
い:いつの情報か?→古くて現在では違うかも


『かちもない』は、「情報は5つを確認しないと『価値もない』」と覚えられます。
元々の頭文字は『いなかもち』[2]ですが、「飾らず素材のままで信頼できる『いなかもち』のような情報」でしょうか。『いなかもち』を入れ替えると『かちもない』になると教えていただいて普及に努めています。

『か・ち・も・な・い』の5つのポイント(評価基準)がどこから来ているのかについては、ヘルスリテラシーとCOVID-19への対応に求められる「か・ち・も・な・い」と胸に「お・ち・た・か」のなかの「情報評価『か・ち・も・な・い』の基準について」をご覧ください。

『かちもない』を広く知ってもらうために、わかりやすい動画を作成しています。
ご覧いただき、YouTube内にコメントを書いていただいたり、シェアしていただければ幸いです。

『かちもない』をより詳しくチェックするには

5つのポイントについては、それが確認できるようになっていない時点で信頼できないと判断したほうが安全です。
その確認のために、より詳しくチェックする方法がありますので、紹介します。
これですべてではないですが、他にもわかりやすいチェック方法があるという方はお知らせください。

〇か:書いたのは誰か、発信しているのは誰か

・匿名では、どこの誰かわからない
・氏名と所属は事実か、所属内での検索や名簿で確認できるか
・専門的な資格を持つことが確認できるか
・医師、教授、医学博士といった肩書だけでは判断できない
・最近、専門分野の論文(査読のある学術雑誌に)を書いているか
・書いたものが、複数以上の第3者の目を通して評価されていることが明記されているか
・組織による情報発信の場合は、非営利の公的機関であるか、組織の目的や運営方法は明確か

〇ち:違う情報と比べたか

・他の情報と違う点はないか
・問題解決のための選択肢が十分にそろっているか
・各選択肢に必ずある長所と短所の両方が提示されているか
・同じ情報でも立場や専門の違いによって見方が違っていて、書き方や伝え方が違う

〇も:元ネタ(根拠)は何か

・出典や引用などで、科学的な根拠として専門分野の論文(査読のある学術雑誌)や具体的なデータが示されているか
・ある個人や団体が言いたいことを言うだけのための意見や感想ではないか
・気を引くような見出しだけで、それが事実や結論と見なしてはいけない
・元ネタをわかりやすく紹介するのは他者への基本的な思いやりである

〇な:何のための情報か

・サイトの目的やリンク先、本のまえがきなどから見て、商業目的で商品やサービスを買うことを促すための広告ではないか
・健康や医療の情報は公的機関がわかりやすく発信するべきで、それ以外の場合は多様な目的であり、 誰かが何らかの利益を得ることになっていないか
・よく見ると記事や画像の中に「広告」「PR」「i」という広告の表示がないか
・感情や直感だけに訴えかける表現で誘導しようとしていないか、理性的・論理的な表現がされているか
・誹謗中傷が目的となっていないか
・情報の確認ができるように問い合わせ先が明記されているか(住所、電話番号、メールアドレス、氏名など)

〇い:いつの情報か

・サイトの作成日や更新日、本の出版年など、最新の情報であることを示す日時などの情報があるか
・健康や医学に関する情報は日進月歩なため、古い情報では、現在は否定されていることかもしれない
・更新の履歴が残されているか
・更新の方針や予定について記してあるか
・更新がしばらくされていない場合は、更新して最新の情報を提供しようとする体制ができていない可能性

自分の責任で選択する

 インターネットは世界中の情報を瞬時に手にすることができる点で非常に便利なものですが、それを利用したことで損出を被ったり、被害を受けたとしても、その責任は自分にあるということを忘れないで下さい。インターネットは善意で支えられているネットワークです。情報を提供した人には責任を問わないことを知っておいてください。公開されている健康・疾病に関する情報、そして電子メールや掲示板、メーリングリストのコメントも皆そうです。

 インターネットなどで提供される医療情報の中には、現在の標準的な医療に合わないものや、科学的な根拠のあいまいなものがあったりします。提供された情報を鵜呑みにせず、常にリスクを考え、そして情報利用の結果を冷静に評価して下さい。情報利用に際しては、情報の中身を自ら検証する気持ちをもって、また利用の結果に対しても、冷静かつ公平に評価が下せる余裕が必要です。

トラブルにあったときは

 万が一、医療情報を利用して、健康被害やトラブルを被った時は、医師や看護師、保健師、助産師、薬剤師など医療専門職、国民生活センターや地方公共団体の消費者センターなど公的な相談センター、あるいは中立的な第三者にあたる人または機関に相談してください。くれぐれも、一人で悩んで抱え込まないようにしてください。すみやかな情報の提供が、次なる被害やトラブルの発生も未然に防ぎます。

下記の相談窓口をご利用ください。

参考になるサイト

下記のサイトも健康情報を見るときに役に立つサイトです。見比べてみてください。

(中山和弘、的場智子) 更新日 2023年4月18日

文献 [1]中山和弘『これからのヘルスリテラシー 健康を決める力』(講談社、2022) [2]聖路加国際大学:ヘルスリテラシー学習拠点プロジェクト教材作成

コメント

インターネット情報を利用する上で、「自分の責任で選択する」ということは何でしょうか。 確かにインターネットはキーワードを入力するだけでいつでも簡単に情報が検索ができます。本を読むように時間をかけることなく必要な情報を取り出すことも出来ます。 しかし医療などに関しては専門用語も多く、書かれている内容を理解することが難しい場合も多いと思われます。 パソコンの画面上ということもあって、図や映像が雑誌等よりも解りにくい点もあると思います。 また、同じ事例を検索しても発信者によって意見が180度違っていたりすることもよくあることです。 更に、情報が速くて便利に得られるが故に、これら対立した意見が短時間で目の前に列挙され、検索者は更に混乱してしまうことも考えられます。 多くのサイトが質問コーナーなどを設け、発信者と直接コンタクトが取れれば本当に有益だと思いますが、全てがこのようなシステムを採用しているとは限りません。 ですので、このホームページにあるように検索者は利点やリスクを認識し、交流サイト等で様々なユーザーとの交流を通し情報を共有することがインターネットでの情報活用の大きなポイント、「自分の責任で選択する」ことになるのだと理解しました。 同時に、まだまだ皆が簡単に有効に情報を活用できる状態にあるとは言えない現実もかいま見ることが出来ました。

てぃーえふ 2011年5月25日18:33

インターネットで調べる時に、どうしても平易に書かれている物を見てしまいます。解らないことを調べているのに新たに解らないことが次々と出てくると苦痛です。 しかし、ほとんどの場合はネットで調べて、そこで全てを自分で解決させなければならない訳ではないと思います。理解できる事を積み重ね、自分の知識の中で整理して、ある程度の予備知識を持って主治医の診察を受ける事で先生の話が良く理解できたり、質問なども出来るようになるのではないかと思います。このような事の積み重ねがヘルスリテラシーを高めていくことになるのではないかと思います。

fubsy 2011年5月30日19:09

ここで述べられている情報の見方についてはすべてのインターネット上の情報についてもいえることですが、医療情報の場合は大げさなことを言えば生死にもかかわってくるような情報となるので特に気をつけなければならないことです。インターネット上にはさまざまな情報があふれていて中には一般ではあまりお目にかかれないようなかなり専門的な情報もあります。自分がその方面に明るいのであれば、これらの情報はかなりすばらしいものだということがわかり利用可能なのですが、あまり詳しくない分野に関してはこの情報が正しいのかすらわかりません。私は医療関係には詳しくないので、正直インターネット上の医療情報はあまり見ていませんでした。せいぜい病院の口コミサイトを調べるか、気になる病気と闘病されている方の日記ぐらいしか見ていませんでした。これからはここでの情報を元にすこし医療情報についても参考にしてみようと思います。

Ka 2011年6月16日20:57

健康や病気のことを調べていて、比較対象となる市民向けのガイドラインのようなものが、広く公開されていれば便利だろうなと思います。複雑な治療や重度の病気でなく、風邪とインフルエンザの違いを見極める、と言った内容モノがあるといいです。

リコ 2011年12月 8日12:01

「質の高い情報をさがす」では基準がとても分かりやすかったです。記載日やプライバシーなど、自分では思いつかなかったポイントも知ることが出来ました。また、インターネットの情報をどのように選んで活用するかが自己責任であるということを改めて考えさせられました。選ぶポイントは今回知ることができたので、それをもとに上手に情報収集をしていきたいと思いました。

りんご 2013年3月29日16:42

こんにちは。 インターネットでの医療情報の探し方について、とても参考になりました。 医療の知識があまりないので、いつもインターネットから情報を得ているのですが、部位と症状を入力すると、上位がほどんど営利目的の広告で、どの情報を信用していいのか分からず、いつも困っていました。 ひとつ質問があります。病名が分からなくて、症状だけで検索をかける時は、具体的にどのような言葉を入力すると信頼できるサイトが出て来やすいでしょうか?

MT 2017年1月20日17:44

症状で検索すると確かに上位には商業的なサイトが多くヒットします。信頼できるサイトに限定する方法には、ドメイン名を限定する方法があります。例えば、「症状名 site:ac.jp」とすれば、ac.jpすなわち教育機関だけがヒットします。また、同様にgo.jpだけにすれば、政府系のサイト、例えば厚生労働省やその管轄の研究機関のサイトだけがヒットします。参考にしてみてください。

nakayamakazhiro 2017年1月29日16:28

大変役立つ情報をありがとうございます。こちら「いなかもち」より「かちもない」がメインに紹介されるようになったのは、いつ頃からでしょうか。変えた理由もわかるとうれしいです。

KK 2020年6月18日20:22

KKさん 「いなかもち」と「かちもない」は両方紹介するようにしていて、どちらにするかは利用する方にお任せしています。最近は「価値もない」という意味を加えることができる「かちもない」を利用する方が多くなってきている印象です。

中山和弘 2020年6月28日23:06

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