メディアからの取材への対応:「か・ち・も・な・い」
8.新型コロナウイルスとヘルスリテラシー
『これからのヘルスリテラシー 健康を決める力』(講談社、2022)
サイト『健康を決める力』をアップグレードしました
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版元ドットコム
情報チェックの「かちもない」と自分らしく決める「おちたか」の動画を公開しました
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高まるヘルスリテラシーへの関心
インフォデミックは、ヘルスリテラシーの不足によって起こっているという文脈で、筆者に対してメディアの取材も来るようになりました。COVID-19に関する誤った情報、フェイクニュースに対してどのように対処すればよいのか、ワイドショーの内容についてどう思うかなどです。ずっと在宅勤務なので、テレビやソーシャルメディアの情報をチェックしつつ細々とTwitterで信頼できそうな情報をツイートする程度でしたが、ヘルスリテラシー関連で話せることを話しました。
これまでに書いたまたは取材を受けたヘルスリテラシーに関する記事
次に記事の一覧を記します。その他にも毎日新聞でヘルスリテラシーに関するコラム「健康を決める力」を毎月連載していたので、そこでもCOVID-19に関連して書きました。
・感染予防 正しく理解...新型コロナ 広がる不安(読売新聞 2020.2.22)
・新型コロナ 特性知り「正しく恐れる」(東京新聞 2020.3.3)
・新型コロナ騒動から考える日本人の「ヘルスリテラシー」(ニッポンドットコム 2020.4.1)
・根拠のないうわさや広告...健康情報、見抜くためのポイント5つ(西日本新聞 2020.4.3)
・「からだ」「こころ」「社会」(毎日新聞 コラム「健康を決める力」2020.4.16)
・新型コロナ 意思決定の手助けに(毎日新聞 コラム「健康を決める力」2020.4.16)
・新型コロナを伝えるワイドショーや情報番組とうまく付き合うには(朝日新聞「論座」2020.5.8)
・コロナのデマどう見極める?鍵は「か・ち・も・な・い」(医療サイト 朝日新聞アピタル 2020.7.17)
・高齢者のコロナ対策(毎日新聞 コラム「健康を決める力」2020.8.13)
・"1人じゃもう限界" コロナ禍でつながるママたち(NHK NEWS WEB 2021.3.29)
・ヘルスリテラシー(TOKYO FM 住吉美紀「Blue Ocean」)
・ヘルスリテラシーをめぐる日本の状況とコロナ禍における必要性.生活協同組合研究. 2021; 544: 17-24.
・特集:行動変容を促す健康教育・ヘルスプロモーションのアプローチ―COVID-19 をめぐる反省と課題から―
健康の社会的決定要因としてのヘルスリテラシー.日本健康教育学会誌.2022;30(2);172-180.
「か・ち・も・な・い」とは?
多くの記事で紹介したのは、あるいは、すでに情報を得ていて詳しく聞かせて欲しいと言われたのは、「か・ち・も・な・い」です。それは、情報の内容の質や信頼性について、どのようなポイントに注意すれば良いかを、5つにポイントを絞って、その頭文字で覚える方法です。詳しくはこちらをご覧ください。
恐怖を煽るメディアへの対応
また、COVID-19の情報として広く混乱を招いた要因になったと思われるワイドショーや情報番組について聞かれたこともありました。それらとどう付き合えばいいかです。すでに行った医師らへの取材を通しても、問題だという人が多く、「見ないほうがいい」と言う人もいたと言います。私もそれに賛同して意見を述べました。
なぜなら、情報とは、意思決定のためにあるからです。すなわち2つ以上の選択肢を知り、そこから1つを選ぶために必要なものです。逆に言うと、問題解決のための選択肢を提示して、それぞれの長所・短所を紹介するという情報でなければ、意思決定につながらず必要ではありません。恐怖を煽るだけであれば、ワイドショーは見なくてもよいことになります。
メディアの役割
私たちの健康や命を守るためにメディアがしなければならないのは、意思決定のためのメッセージを流すことです。例えば、新型コロナの感染予防に必要なのは、すでに言われているように、手を洗う、マスクをするなどです。それら以外に、科学的な根拠を伴って選択できる選択肢がない場合は、それがないこと、もしフェイクニュースと思われるものが登場したらそれを否定して修正することです。厚労省が比較的早い段階で、こまめに手洗いをすることが効果的など、日常で実践できる情報をツイッターで発信した一方で、メディアでは増え続ける感染者、死亡者の数字だけが報道されてきました。しかし、リスク情報は対処できるならリスクを減らせますが、対処できないなら単なるストレスになってしまいます。
視聴者が注意すべきこと
とくにワイドショーは、そもそもエンターテインメント性の高いもので、世間で起きているさまざまな問題をおもしろおかしく取り上げてきたものです。視聴者はそれを他人事として楽しみながら、話題にしてきたわけです。その上で、今回もこれまでと同じスタンスで客観的に見ることができないのであれば、あるいはストレスを感じるようであれば、見ないほうがよいと伝えました。そして、ワイドショーや情報番組で流される情報は「2次情報」であるという点もです。これは、オリジナルのデータ(1次情報)を使用した情報であり、都合よく編集されていることがあることも注意する点です。
(中山和弘)(公開日2023年3月7日)