COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によるインフォデミック
8.新型コロナウイルスとヘルスリテラシー
『これからのヘルスリテラシー 健康を決める力』(講談社、2022)
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情報チェックの「かちもない」と自分らしく決める「おちたか」の動画を公開しました
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根拠のない情報が交差するコロナ禍
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックによって、健康情報を入手、理解し、評価して活用できるヘルスリテラシーに注目が集まりました。「新型コロナウイルスはとても熱に弱いのでお湯を飲めば治る」などの科学的根拠のない情報も流れました。ニュースや記事では、「クラスター」「ソーシャルディスタンス」などの聞きなれない言葉を含めて、新型コロナウイルスへの新規感染者数と死者数、健康と経済のどちらを優先するのか、飲食店等への休業要請による倒産や自殺の増加、東京オリンピックを開催するべきか、ワクチン開発や接種の遅れの原因は何か、政府や行政の対応は不十分ではないかという情報が提供されました。
インフォデミックにより広がるCOVID-19への恐怖と不安
2020年2月、WHO(世界保健機関)の事務局長Tedros氏は、COVID-19について、「私たちは単なる伝染病と戦っているのではなく、インフォデミックと戦っているのです。フェイクニュースは、このウイルスよりも速く、簡単に拡散し、同じくらい危険です」[1]と述べました。インフォデミックとは、WHOによれば、インフォメーションとエピデミック(流行病)の混成語で、虚偽や誤解を招くような情報を含めた情報が氾濫することです。こうした中では、ヘルスリテラシーが十分でないと、人々は事実とフィクションを区別できず、信頼できない情報が行動に影響を与えることで、個人だけでなく、社会全体にも悪影響を及ぼしかねません。また、COVID-19への恐怖や不安を急速に広げる心配もあります。
ヘルスリテラシー向上のための呼びかけ
日本でもネット上では「ヘルスリテラシー」「医療リテラシー」「健康リテラシー」が低いとか問題だとする書き込みが急激に増えました。そこで、2020年の2~7月まで毎週Twitterを検索し、COVID-19に関連したツイートを『Togetter』で収集して一覧できるようにして公開しました(「新型コロナウイルスへの対応で注目されるヘルスリテラシー(医療リテラシー、健康リテラシーを含む)」)。そこでは、「国際的にヘルスリテラシーが注目される理由は、様々な属性に寄らずそれが低い人が多いため、みんなでそれに気づき、支援や向上のための方法を考えましょうということです。誰もが情報を得て適切な意思決定ができるための支援を考えましょう。ヘルスリテラシーの詳しい情報はこちら」と記しました。
なぜなら、知識不足の人やデマを信じる人を、ヘルスリテラシーが低い人だとしてそれを嘆くツイートが多くありましたが、それは本人の責任だけではなく身に着けにくい環境にあるためであり、犠牲者非難にもなります。国際的に強調されていることは、いかに多くの人がヘルスリテラシーを身に着けていないかを認識した上で、情報は理解しやすい方法で、透明性を持って説明し、非難することは避け、ハイリスクの人々と連帯を示しながら、情報に基づいて行動できるように支援することです[2]。
(中山和弘)(公開日2023年3月7日)
文献
[1]Munich Security Conference. World Health Organization. 2020 Feb 15. https://www.who.int/dg/speeches/detail/munich-security-conference/
[2]Okan O, Messer M, Levin-Zamir D, Paakkari L, Sørensen K. Health literacy as a social vaccine in the COVID-19 pandemic. Health Promot Int. 2022 Jan 12:daab197.